「オープン・イノベーション」は聞いたことがあると思うのですが、「オープン・サービス・イノベーション」はどうですかね?私は知りませんでした…。

ちょうど読んだこのタイトルの本が、まさに最近感じている米国のビジネスモデルの変化を説明していたので、自分の読書メモがてら「オープン・サービス・イノベーション」についてまとめたいと思います。

オープン・イノベーションとは?

あらゆるところで目にする「オープン・イノベーション」という言葉。これは現在カリフォルニア大学バークレー校でテクノロジーとイノベーションのマネジメントを中心に研究を進めているヘンリー・チェスブロウさんが提唱した「企業内部と外部のアイディアを有機的に結合させ、価値を創造する」モデルを表す言葉です。

いわゆる自前主義である「クローズド・イノベーション」との対比表を見るとわかりやすいと思います。以下は、書籍「オープン・サービス・イノベーション」からの引用です。

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このチェスブロウさんが「オープン・イノベーション」に続き提唱しているのが、「オープン・サービス・イノベーション」。米国では2011年に出版された書籍なんですが、遅ればせながら日本語版を読んでみました。

オープン・サービス・イノベーションとは?

『オープン・サービス・イノベーション』では、サービス重視の経済が加速する昨今、オープン・イノベーションとサービス・アプローチを組み合わせることがビジネスの成長と競争にとって、効果的な方法であることを実証した新たなアプローチを提案している。

本書では、製品中心からサービスを中心にするイノベーションへ考え方を転換し、オープン・イノベーションにより顧客と共創することで、持続可能なビジネスモデルが生まれ、継続的に顧客価値が創造されることを示している。企業やサービス業、新興経済国に対するガイダンスと分かりやすい具体例、そしてイノベーション産業への道のりが示されている。

製品が技術革新によりコモディティ化する中で、企業は製造業にとどまらず、サービス業へも積極的に取り組まなくてはならない!という考え方です。日本でも最近よく「モノづくり」ではなく「コトづくり」という言葉を聞きますが、それと似たようなコンセプトです。

製造拠点が世界中の低コスト地域に広がって、価格を下げるコモディティ化のプレッシャーから逃れられないため、企業の競争が一段と激しくなってきた。インターネットの普及とテクノロジーの進化で知識と情報の流れが加速すると同時に、製品寿命も短くなった。そこで新製品がどんどん市場に出回る。多くの企業がやりにくくなったと感じる昨今、顧客のニーズを満たすために、カスタム化した製品やサービスへのニーズが増大し、製品寿命はさらに短くなる。

このように製品がコモディティ化する中では、製品中心のイノベーションの限界を超えて、「ユーザーがその製品を使って何ができるのか、わくわくするようなサービスをどう追加していくのか」というサービス志向を取り入れていく必要があります。

以下、この本の中で説明されている「サービス志向」について、いくつか私が気になった点を引用します。

製品を扱うビジネスモデルでは、在庫水準、売上総利益、欠陥率など製品に関連する財務指標が中心だ。一方サービスを扱うビジネスモデルの場合、製造分野とは大きく異なり、顧客保持率、顧客生涯価値(LTV)、顧客満足度(CS)などが基準となる。
ビジネスをサービスという枠組みに入れると、ビジネスに対する考え方が変わる。顧客との関係の築き方、ビジネスの構築法、差別化や価値創出の手段といった、すべてのものがサービス志向になる。
ビジネスとは顧客に体験を提供するものだと考え直そう。顧客をイノベーションのプロセスに参加させよう。さらに、自社のビジネスアイディアに役立つ最適なアイディアや技術を手にいれるため、広範囲にイノベーションのプロセスをオープンにして、他社のビジネスモデルで自社のイノベーションをつかってもらう。

実際に「オープン・サービス・イノベーション」を実践している企業の事例(冒頭の画像にロゴがある企業など)も盛り込まれているので、詳しくは書籍で読んでいただきたいのですが、確かに自分のまわりでもこういった傾向が加速しているように感じます。いくつか具体例をピックアップしてみました。

自動車メーカーから移動サービス企業に!米大手自動車会社 Ford

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1つ目は自動車メーカーFordの例。Fordはまさに自動車メーカーから、移動サービス企業に転換をはかろうとしています。

Fordは昨年通勤バスのChariotを買収、また6月からサンフランシスコで自転車シェアのサービスFord GoBikeをはじめました。最初は「え!Fordが!自転車?」と思いましたが、「顧客がお金を払っているのは、自動車ではなく移動」という発想の転換があったことがうかがえます。まさに「オープン・サービス・イノベーション」の実践ですね。

CEOのマーク・フィールズさんが、今年1月のBusiness Insiderのインタビューで、「車を売るだけでなくサービスを強化したい」という話をしています。

締めるカギではなく、カギを開けるサービス!スマートロック August

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スマートロックを販売しているAugustは、ただスマホを使ってカギを締められるだけでなく、顧客がカギを開けるシチュエーションにも配慮し「August Access」というサービスを提供しています。

荷物のお届け、家事代行サービス、クリーニングのお届けなど、カギを開けるシチュエーションを想定して、ワンタイムキーを発行することができる仕組みです。ただカギを売るのではなく、カギと顧客の関係をより深く観察したからこそできた、これまた「オープン・サービス・イノベーション」の実践だと思います。

IoT=モノのインターネットは、モノの販売ではなくサービス提供が収益モデルになっている

前述のスマートロックも含め、IoTは「モノのインターネット」と訳されますが、モノの売り切りではなく、サービスを収益モデルにしているものが多くあります。

たとえば、スマートオーブンレンジを販売するTovalaは、$399でスチームオーブンレンジを販売してますが、そのレンジを活用して調理できる食材宅配サービスを付加することで、新たな収益モデルを作っています。

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またAmazon Echoはただのネットにつながるスピーカーではなく、アマゾンのサービス(音楽、ビデオ、買い物)を消費できるようにできています。

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やはりモノだけではなくサービス設計を付加することが大きな流れであることを感じますし、アマゾンのようにサービスが主体である企業が、顧客の利便性を高めるためにモノ製造に乗り出すという流れも起こっています。

直近では、レシピ動画サービスのTastyがスマートコンロを売り出しました。レシピ動画&アプリ→スマートコンロの次は食材宅配サービスが展開されるのではないかと予想しています。

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この「オープン・サービス・イノベーション」の本文中にダーウィンの言葉の引用がありました。

「生き残るのは、もっとも強い種でも、もっとも賢い種でもなく、もっとも変化に適応できる種だ」

第三次&第四次産業革命とも言われ、大きくビジネスや社会構造が変化する今、これはインパクトのあるいい引用だなぁーと思いました。

「オープン・サービス・イノベーション」という言葉、初めて聞いたという方には、この本オススメです!

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