2月ソフトバンクがコワーキングスペースを運営するStartupのWeWorkに$4B(1ドル100円でも4000億円!)の投資を検討しているというニュースが出ました。このディールが成立したらWeWorkの企業価値は$20Bになります。

以前から、WeWorkってコワーキングスペース運営してるだけなのに、なんでそんなに評価高いんだろう?と思ってたのですが、さらに上がってる!テック系のスタートアップが急激に成長することはわかるのですが、スペースをレンタルして貸し出すWeWorkのバリュエーションはなぜそんなに高いのか?気になったので調べてみました。

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WeWorkとは?

wework web

https://www.wework.com/

アメリカをはじめ中国、韓国、フランス、ドイツなど36都市154カ所でコワーキングスペースを提供するスタートアップ。ニューヨークで2010年に創業されました。私が住むサンフランシスコにはWeWorkのスペースが7つあり、どれも人気で入居待ち状態のようです。

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当初は少人数のスタートアップやフリーランスの個人に向けてサービスをスタートしたWeWorkですが、現在は大企業向けサービスも充実させています。数百人規模で入居する企業もあるそう。WeWorkの利用メンバー80,000人のうち14%は従業員500人以上の会社に属する従業員で、Dell、マッキンゼー、セールスフォースなども名を連ねています。

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例えばサンフランシスコでオフィスを借りようとすると、3〜5年の契約を要求されるのが普通です。さらにオフィスの内装工事にお金と時間がかかったり、電気やインターネットを契約したり…などなど、個人事業主や少人数のスタートアップにとっては、オフィスを持つことは非常にハードルが高い。そういった層に向けて、月単位で借りれるオフィスを提案したのがWeWorkでした。最初のライバルはスターバックス。スタバにMacbookを持参して作業しているような人達が最初のターゲットというのは、わかりやすいですよね。

WeWorkなら、安定した高速インターネット、オシャレなワークスペース、プリンター、コーヒー&ビール無料、常駐スタッフによるフォロー、フォンブースなどの設備が整っており、仕事をするならスタバより断然快適!

料金は、メンバーシップが$45〜、フリーアドレスのデスクは$220〜、固定席は$350〜、個室オフィスは$400〜。もちろん都市によって価格は異なりますが、類似のサービスと比べると高めの少し強気な価格設定になっています。それでも大人気でサンフランシスコでは空室待ちの状態となっています。

WeWorkの売上は?

Buzzfeedの記事によると、売上は以下の通り。2014年の数字なのでだいぶ前ではありますが、

WeWork expected operating profit of $4.2 million from revenue of $74.6 million by the end of 2014. By 2018, the company predicted operating profit of $941.6 million on revenue of $2.86 billion.

2014年は$74.6Mの売上で、そのうち利益は$4.2Mを見込んでいる。2018年までに$2.86Bの売上で、$941.6Mの利益が見込める。

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この記事が公開された時点でWeWorkには$10Bの評価がついています。類似のビジネスを行っているRegusの時価総額は$2.8Bほど。Regusは世界106カ国、977都市2,768カ所でオフィススペースを提供しています。やっぱWeWorkの評価が高すぎる気がする!

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関連資料: Regis Annual Report 2015

WeWorkは何がすごいのか?

ということで本題です。何がすごいのか?オシャレでイケてるスペースというだけであれば、他にもあるので、WeWorkならではの強み、他社の追随を許さない点はなんなんだろう…と色々調べて、5つにまとめてみました。

1. ソフトウェア会社のようにオフィスを開発する

以下はForbes Japanの記事より。従来の不動産よりもソフトウェアやデータを活用したアプローチを行っているようです。

同社ではオフィスの建設、デザイン、開発のすべての工程で、自社開発のソフトウェアを活用している。これによって「すばやく事業を拡大し、効率的に運営できる」のだという。

たとえば、マンハッタンでは従業員一人当たり250平方フィート(約23平方メーター)ほどのオフィススペースが一般的だが、同社が提供するオフィスでは無駄なスペースを排除した結果、その5分の1程度に縮小できているという。当然、面積当たりの売り上げは高くなる。

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レガシー企業は新たな技術を取り入れることに、非常に慎重になったりするものなので、確かにWeWorkは不動産業界においては、かなりフットワークが軽いのかもしれません。

2. 規模が拡大すればネットワーク効果が見込める

WeWorkに関する英語&日本語の記事を読んで得た印象としては、やはり世界中にスペースを広げることによるネットワーク効果に強い期待があるようです。

世界中に広がる入居者コミュニティ

WeWorkは世界中のスペースの入居者をベースとしたコミュニティを運営しています。WeWorkは入居者間でビジネスが生まれることを推奨しているようです。これはいずれLinkedInのようなビジネスネットワークになっていくことも期待できるでしょう。以下は日経BPの記事より。

定期的なイベントで会員企業同士のつながりを深める取り組みを行っている他、会員のみが使えるSNSを提供しているのも特徴だ。他の業種のベンチャー企業とつながるだけでなく、WeWorkを利用しているグラフィックデザイナーやエンジニアを雇用するためのツールとしても使われている。

さらに、労務管理サービスの優待、保険やジムの優待など、会員向けの優遇サービスも充実。こうした、今や他のコワーキングスペースも導入しているサービス内容の多くは、WeWorkが先駆けとなって導入してきたものだ。

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ビジネスツールを提供する企業は、WeWorkの入居者に対して一括マーケティングをしたりといったことも可能です。WeWorkはオフィススペースだけでなく、ビジネス向けのマーケティング機会を提供することも可能なんですね。

世界中どこでも使えるオフィスサービス

スタートアップ、個人、大企業問わず、会員は世界中のWeWorkを利用することができます。スペース数が増えれば、利用者にとってはさらに便利になり、新たな会員が増えるきっかけにもなるでしょう。

WeWorkのライバルとして、スターバックスやホテルチェーンがあげられることがあるのですが、世界中どこでも同じクオリティのサービスが受けられる安心感というのは、確かにオフィス環境にもあると嬉しいものですよね。絶対にWiFiはつながってほしいですし、出張先で使える会議室があれば出張を効率よく過ごせると思います。

マイクロソフトはWeWorkと以下のようなパートナーシップをスタートしています。

WeWorkとMicrosoftは「City as a Campus」パートナシップをスタートする。これによってMicrosoftの300人のグローバルセールス並びにマーケティングチームは、マンハッタンにある全てのWeWorkのオフィス、コミュニティ、そしてサービスを利用できるようになる。

この新しいパートナーシップの一環として、MicrosoftがWeWorkコミュニティ内で新しい製品やサービスをテストすることも含まれている。これはWeWorkの実際の従業員から始まるが、最終的にはWeWorkの利用メンバーへと広げられる予定だ。

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大企業にとっては、スタートアップや起業家と近くで働ける環境、イノベーションを起こすための普段とは異なる雰囲気といったものも魅力の一つのようです。

3. スタートアップのインキュベーションや投資に活用

WeWorkはアーリーステージのスタートアップ向けにWeWork Labsというインキュベーションプログラムを運営しています。前述のWeWorkが持つビジネスネットワークによって、参加スタートアップの成長が加速する可能性もあるでしょう。

またインキュベーションプログラムに参加しているスタートアップでなくても、WeWorkは入居企業の成長を知ることができるはずです。好調な企業は従業員が増える、増床する。それをWeWorkはいち早く知ることができる。入居スタートアップの成長を誰よりも近くで見守っているわけですから。

スタートアップの成長をドライブできる環境が作れるのであれば、WeWorkはいずれ本格的なFund運営もしはじめたりするのではないかと思いました。

4. 新たなサービスを追加し、未来のライフスタイルを提案

WeWorkはオフィスだけでなく、WeLiveという住居版WeWorkをスタートしています。日本でいうマンスリーマンションのようなもの。オフィス空間のWeWorkと居住空間のWeLiveの組み合わせで、WeWorkは世界中どこでも気軽に暮らせる&働けるライフスタイルを提案しています。

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WeWorkは、ニューヨークに簡単に引っ越せる方法としてWeLiveを定着させたい考えだ(スタートアップのようにね)。引っ越しにかかる余計な費用、家具やキッチン家電を購入する費用もかからず、公共設備をセットアップする必要もない。

それに、WeLiveの住戸ではハッピーアワー、カラオケセッションといったコミュニティーイベントを開催するという。それらはWeLiveアプリから探すことができる。

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WeWorkで得たナレッジを居住スペースにも展開していくようです。

5. なんだかんだトレンドに乗っている

WeWorkは「これまで不動産屋が無視していた層、 “micro-office space”のマーケットを切り開いた」「UBERは車、Airbnbは宿泊、WeWorkはワークスペースのシェアリングエコノミーを切り開いた」「Space as a Service」などと言われており、シェアリングエコノミーのトレンドに乗っている感はあります。

評価額が高すぎる事については、色々算出してみてやはり高すぎる!と評するメディアも多く、投資家が「次のUberやAirnb」に投資できるタイミングを逃したくないので、高すぎるように見えるバリュエーションも受け入れているのではないか?という見方もあるようです。

Uberが自動車業界を、Airbnbが宿泊業界をDisruptしているように、WeWorkは不動産業界をDisruptするのでは!?という期待値が高い気がします。

他の追随を許さない点は?

既に築いているブランド、先行者有利などは確かにあると思います。既存の不動産業界がWeWorkを作れないのか?というとできるような気がしますが、意外とできないのが大企業なんですよね。

WalmartがECサイトのJet.comを買収、Fordが通勤バンのChariotを買収、Unileverが髭剃りECのDallar Shave Clubを買収したように、大企業にはできない、スタートアップだからこそできる成長があり、米国ではそれを大企業がM&Aにより取り入れようとしています。

昨年のTechCrunch TokyoでYCのパートナーのQasarさんが、スタートアップと大企業の違いについて「スタートアップには過去がない。未来だけを見てる。大企業は過去を守りながら進まなくてはならない。未来に向かうスピードが大きく違う」と話していました。このWeWorkの評価の高さについて調べながら、その言葉を思い出したのでした。

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未来のオフィスはどうなる?

私達はこれからオフィスに囚われない働き方をするのでしょうか?WeWork Labs(インキュベーションの方)の創業者Jesse Middletonは、旅しながら働くツアーを企画するRemote Yearに投資しています。

旅への強い情熱をもつ人たちにとって、Remote Yearのアイデアはとても魅力的にうつることだろう。参加者は1年間、リモートで仕事をしながら毎月新しい街や国へと旅を続けるというアイデアだ。

創業者兼CEOのGreg Caplanが最初にこのアイデアを思いついたのは2年前のことだという。そして彼が第一回目のプログラムへの参加者を募集すると、75人の枠に2万5000人の応募者が殺到したのだ。その75人は先日1年間のプログラムを終えたばかりだ。その後、同社はこれまでに6つのプログラムを実施し、合計で500人の旅するワーカーがRemote Yearに参加している。

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Remote Yearのニュースを聞いた時には、夢物語みたいな話だなぁと思いましたが、確かに実現できたら楽しそうではあります。AIやロボットによって単純作業が減り、仕事がよりクリエイティブになるならば、こういった働き方もありえるのかもしれません。旅は仕事にも良い影響がありそうです。

そんな時代が来たら、世界中に広がるWeWorkはビジネスマンにとっての必須アイテムになるのかもしれませんね。

ということで、私の考察はここまで。他にも「WeWorkの評価が高い理由はこれだよ!」というのを知ってる方がいたら教えて下さいー!

<3/14追記>
WeWorkについての柴田さんの【決算が読めるようになるノート】が更新されました!「シェアオフィスのWeWorkはなぜ2兆円もの評価額になるのか?」。拠点あたりの利益率40%を実現しており、高い利益率と高い成長率の掛け算によって、高い評価額となっているようです。初期投資を抑える仕組みが肝のようですね。

WeWorkは不動産を所有せず、WeWorkが大家さんから借りてテナントに貸す、いわゆる又貸しモデルなわけですが、この数年で不動産の貸し手の大家さんにとって「ぜひ!WeWorkに借りて欲しい!」という存在になっていることが改めてスゴイと思いました。

Buzzfeedの記事によるとWeWorkはextra-longなリース契約を結ぶようです。5〜10年は普通の契約期間なので、果たしてどのぐらい長期なのかわかりませんが…そこはリスクな部分でもあると思うので、その出店場所探しにも何かノウハウがあるのでしょう。

<以下その他の参考記事>

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