サステナに向き合う米企業、購買原理に脱炭素
奔流eビジネス(スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速している。政府だけでなく、もちろん企業の取り組みも活発だ。
米グーグルは「2022年までにユーザー10億人に環境負荷を軽減する新たな方法を提供する」というサステナビリティーへのコミットメントを宣言している。今年10月に行われた同社のイベントでは、検索、地図、旅行、家といった領域でユーザーが温暖化ガスの排出量が少ない選択肢を取れるよう、サポートする機能をリリースすると発表した。
例えば「グーグルフライト」で飛行機を検索すると移動に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量も表示。料金や時間だけでなく、より地球に優しいという観点からフライトを選択できるようになっている。「グーグルマップ」では、CO2排出が少ないルート(燃費がよいルート)を提案してくれる。グーグルを経由してショッピングする場合は、よりエネルギー効率のよい家電が提案されるようになる。
D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)のスニーカー企業で先日上場を果たした米オールバーズも今年、独アディダスと共にローカーボンスニーカーを発売した。独自技術や素材のイノベーションを共有することで、パフォーマンスやデザインは妥協せず、カーボンフットプリント(温暖化ガス含有量)を63%も低減したスニーカーを作り出した(アディダスの他の商品との比較)。ライバル同士という垣根を越えて協力しあうという姿勢、その必要性を提示した。
カーボンニュートラルな食品を生産するスタートアップもある。米ニュートラルフーズは、カーボンニュートラルな牛乳を販売している。農家と協力して堆肥や肥料の管理方法、メタンガスの放出を削減する飼料への変更などのプロジェクトを展開している。
ゼロカーボンを掲げる新しいタイプの銀行もある。13年創業で、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じた上場を予定するスタートアップ、米アスピレーションの銀行口座は、預けたお金が石油や石炭に関連する企業の運用に使われることはない。この銀行のデビットカードでガソリン代を支払うと、運転により排出されるカーボンを算出し銀行がその分をオフセット(埋め合わせ)してくれる。環境に配慮した店舗での買い物は最大10%のキャッシュバックが受けられる。
同社が発行する「アスピレーション ゼロ」というクレジットカードを使えば、支払いをするごとに植樹が行われる。植樹によりオフセットされるので、同社のサービスを使うことで、自分でカーボンニュートラルを実現できるように設計されているのだ。同社には、レオナルド・ディカプリオやロバート・ダウニー・ジュニアなども投資しており、セレビリティーからの関心も高い。
このように米国では普段の購買行動に「カーボンニュートラル」という選択肢が、ちらほらと入りはじめている。いち消費者として、普段から地球温暖化対策を行うことが可能になる。今後は同じような商品、サービスが並んでいたら、地球にやさしいプロダクトを選ぶのは当然の流れとなるだろう。
[日経MJ2021年11月26日付]