贈る・学ぶ…米で広がる新動画サービス 有名人を身近に、成長期待高く
奔流eビジネス (スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
夫の誕生日に何を送ろうか? 今年は「Cameo」という有名人やアスリートがメッセージビデオを贈ってくれるサービスを使ってみた。夫が好きなスター・ウォーズの登場人物に、バースデーメッセージを録画してもらった。80秒ほどの動画に払った金額は100ドル。高いだろうか? 安いだろうか?
このサービスは、映画やドラマの登場人物、NBAやNFLといったスポーツリーグの選手、コメディアンや人気ティックトッカーなど、4万人を超える有名人に動画メッセージをリクエストすることができる。結婚式や誕生日、送別会などで流すビデオだ。内容はリクエストすることができるので、個人的なメッセージを贈れる。
金額は人によって異なり、数十ドルから数百ドルと幅広い。コロナ禍で大きく売り上げを伸ばしており、米「CNBC Make It」によると、2020年の1年間で130万回のビデオが収録され、売上高は1億ドルを超えたという。
デジタルギフトは直接会わずに渡すことができ、受け取った喜びをソーシャルでシェアしやすいのもポイントだろう。もらったお祝い動画をシェアすれば、さらにお祝いの言葉が集まるという相乗効果がある。また「なんだこのサービスは?」と興味を持ってもらうきっかけにもなる。
一人で数百ドルの動画を贈るのは敷居が高いが、何人かで出し合ってであれば、また使ってみたいと思った。名前を呼んでくれるし、自分たちのために撮ってくれたビデオである。短いながら意外と満足度は高い。その有名人に対して親近感がわいた。Cameoは有名人と1対1で話せるサービスも開始した。
有名人にまつわるネットビジネスでは、米国では「MasterClass」が話題だ。5月には2億2500万ドルという大規模な資金調達も行った。その道のトッププロフェッショナルが先生のオンライン学習サービスで、ナタリー・ポートマンから演技を、マーク・ジェイコブスからファッションを、マーティン・スコセッシから映画作りを、ボブ・アイガーからビジネスを、セリーナ・ウィリアムズからテニスを学ぶことができる。
支払いは年契約の180ドルのサブスクだ。学ぶために見るコンテンツなので、財布のカテゴリが「エンタメ」ではなく「学び」になることを狙っていることがうかがえる。企業向けのボリュームディスカウントメニューもあり、社員の能力開発への活用を促している。
私も実際に登録し、いくつかのクラスを取ってみた。1クラスあたり20個程度の動画で構成されており、一つ一つの動画は10分程度なので無理なくみることができる。100人を超えるプロフェッショナルのクラスを視聴できる。
本格的に学ぶというより、ビジネス書を動画で読んでいるような感覚だった。前述の通り先生が超有名人なので、広告のビジュアルもインパクトがある。インスタグラムやユーチューブ広告などで話題となった特徴的なCMは、パロディー動画が作られるなど、違った意味でも話題となった。個々人の専門性や知名度をいかしたサービスは、ネットによりまだまだ可能性が広がっているのを感じる。
[日経MJ2021年6月11日付]