中古衣料品売買で市場活性化 「循環型」顧客開拓・回帰も期待
奔流eビジネス (スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
中古品マーケットはここ数年大きな盛り上がりを見せている。米中古品のネット取引を手がけるスレッドアップの発表によると、2019年に280億ドルだった中古品マーケットが、24年に640億ドルになると予想されている。米国ではリセールスタートアップの上場も相次いでいる。
リセールスタートアップの台頭は、新品を販売するブランドにとっては脅威のように思われる。日本でも「メルカリで買うから、新品を買わない」といった流れがあると思う。そんな中、スレッドアップはGAP、ザ・リアルリアルはグッチと、リセール系サービスとブランドとが連携する動きが活発になっている。
GAPは店頭でスレッドアップに中古服を簡単に送付できるキットを配布。送付した顧客は現金またはGAPグループで使えるギフトカードを入手できる。グッチは期間限定で、ザ・リアルリアル内に中古アイテムを取り扱うオンラインショップを開いた。
これまでは新品を販売していたブランドも、企業の社会的責任(CSR)、SDGsといったことが重視されるにつれ、新品だけを販売するのではなく、自社ブランドの中古品にも気をつかう必要が出てきた。新品を売っているだけでは環境に優しくない。長持ちするブランドなら、中古品にも目を向けるべきだ。こう言った取り組みは「循環型経済」などと呼ばれ、中古品のネット売買を意味する「リコマース」という言葉も米国で話題になっている。
これに以前から取り組んでいるのがパタゴニアだ。「ウォーン・ウェア」というサイトを運営。中古のパタゴニア商品を買い取り・販売する。
仕組みはシンプルだ。中古のパタゴニア商品を店舗に持参するか郵送することで、買い取ってもらえる。アイテムごとに金額が決まっており、最大100ドルまでのパタゴニアのギフトカードと交換。ギフトカードは店頭、パタゴニアオンライン、そしてこの中古品を扱うウォーン・ウェアで使うことができる。ウォーン・ウェアにはこうして買い取られた中古品が並ぶ。
こうした取り組みは、価格が高いためブランドを購入することがなかった若年層の購入を促進するだけでなく、昔は購入していたが今はブランドから遠ざかっていた顧客に、商品の売り手として関与を促すこともできる。
筆者もパタゴニアの子供服をウォーン・ウェアで購入した。普段はすぐ育ってしまう子供の服を高い値段で買おうとは思わないが、正規品の半額ならば手が出せる。買ってみたら質の良さを実感し、長く着られる年齢になったら正規品を買ってもよいかもしれないと思えた。地球に優しい選択をした気もして、少し気分がよくなった。
ウォーン・ウェアというサイトは表向きはパタゴニアの運営だが、裏側ではトローブというスタートアップが、全てのオペレーションを担っている。アウトドアギアのREIやリーバイスといったブランドでも、中古品取引サイトの運営を担っている。
あらゆる商取引でEコマースに対応するのが必要になったように、いずれ「REコマース」への対応も必要になってくるのかもしれない。
[日経MJ2021年2月19日付]