広がる選択的ノンアル、ノンミート コロナ禍で世界的な潮流に
奔流eビジネス (スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
ノンアルコール飲料といえば体質的にお酒が飲めない人のものという印象だったが、最近は飲めるけれどあえて飲まない「選択的ノンアル」の人が増えている。米国では一歩進んで、こだわりのノンアル飲料を作るスタートアップが増加中だ。筆者も子供の授乳中にこの「こだわりのノンアルコール」が好きになり、お酒が飲めるようになった今でもよく買っている。
特に最近気に入っているのが、サンディエゴ発のノンアルコールジン「MONDAY」だ。クラウドファンディングで人気を集め、現在はアマゾンで購入できる。その名前の通り「月曜日から飲める、でも翌日に酒が残らない」がコンセプト。アルコール度数が高いジンの風味を、平日でも遠慮なく楽しめる。
他にもクラフトノンアルコールビールをネット通販で取り寄せたり、ノンアルカクテルのレシピを検索して作ってみたりしている。飲み口がアルコール飲料に近づき、程々の満足感を得つつ、体にも優しい。
つい先日、東京・六本木にノンアルコールバーがオープンしたというが、ノンアル飲料の選択肢が多い日本では米国よりさらに「選択的ノンアル」の傾向が強まるだろう。新型コロナウイルスの「第2波」への懸念が高まるなか、巣ごもりでつい飲み過ぎてしまうという人も多いのではないか。コロナ禍で健康に気を使う人も増えており、ノンアル市場にとっては追い風だ。
米国では「選択的ノンミート」も大きな流れとして感じる。米ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)が20日から、カリフォルニアの50店で、植物性タンパク質を原料とする代替肉(ビヨンドミート社製)を使った「ビヨンドフライドチキン」の販売を始めた。
バーガーキングも代替肉(インポッシブル・フーズ社製)を使った「インポッシブルワッパー」を扱っている。マクドナルドはカナダの一部店舗で試験的に代替肉を取り入れており、スターバックスも朝食のサンドイッチで代替肉を使い始めた。
そもそも代替肉が盛り上がっている背景には、人口増加に伴う食糧生産の限界見通しがあった。牛が温暖化ガス(メタンガス)を大量に発生させるので、牛肉生産は環境負荷が高いという面もある。そういう流れの中で、菜食主義ではないのに、環境保全などの観点からあえて代替肉を食べる「選択的ノンミート」の人が増えている。
数年前にドミノピザが店舗でサラダを導入した。これは単にサイドディッシュを増やしたわけではなく、ピザを食べない人がいる時にドミノが選択肢から消えないようにするための施策だった。同じように、今後はノンアルやノンミートという選択肢も、用意する必要が出てくる。企業の社会的責任(CSR)もあって、外食大手がこぞって代替肉を扱い始めているのだ。
コロナによって食肉の供給量が落ちた中国などでも代替肉市場は急拡大している。世界的に需要が高まれば、企業側も思い切った投資ができるようになり、代替肉のクオリティーがさらに上がってくるだろう。本物の肉と遜色なくなる日も近いかもしれない。
[日経MJ2020年7月31日付]