編集委員の横尾茜です。

自分にとっては習慣化してしまって意識していないことが、他人にとっては目からウロコのライフハックだった!? なんて激レアなライフハックを探るインタビュー『突撃!隣のライフハック』。

今回は、一日に摂る食事を一度だけに制限することで人間が本来もっている生命力を活性化させようという『一日一食健康法』の南雲吉則先生に突撃しました。

「50代なのに見た目は20歳も若く見える!」、「30代にしかみえない!」と噂の南雲先生。実際にお会いしてみると、「本当に50代?」と思えるほど若々しい外見でした。私はまず、1日1食でお腹がすかないのですか?という素朴な疑問からを投げかけてみることにしました

 ■若さの秘訣について

横尾(以下ヨ):先生は37歳の時には、身長が173cmで体重が77kgだったと聞きました。今は菜食中心の1日1食とのことですが、その食生活に変わったきっかけを教えてください。1日1食でお腹すかないですか?

南雲(以下ナ):もともとは1日3食食べる暮らしをしていました。日本の医師は基本的に1日3食をすすめます。私もどんなに忙しくても必ず1日3食。そして「一汁一菜」にしっかりこだわっていました。

一方でこれが非常につらかった。

例えば前日少し食べ過ぎて胃もたれしていても、朝は必ず食べなくてはならない。朝食べるという前提で朝食を用意してもらっているのに残すわけにもいきません。

そしてお昼、どんなに忙しくても「一汁一菜」。サンドイッチなどで済ませることはありません。1時間後に提出しなくてはならない書類があっても一汁一菜をしっかり噛んで...。お腹いっぱい食べてしまったら午後の診察、手術の時に眠気が襲ってくる。これが、私にとっては1日3食が本当に苦痛だったんです

そんなことを続けていたある時、体が1日3食を求めていないことに気がついたんです。脳に支配されているだけで、そしてこれに捉われる必要はないのだと。


ヨ:意外です! 1日1食の生活、大変だろうな...と勝手に思い込んでいたので、先生にとってはむしろ1日3食の方がつらい生活だったなんて! 「脳に支配されている」というのはどういうことですか?

ナ:「空腹」と「空腹感」の違い、わかりますか? 空腹は物理的にお腹になにも入っていない状態。空腹感は空腹だと感じている状態です。後者は必ずしも物理的に空腹とは限りません。なんとなくランチを食べる時間だから、手持無沙汰だからといったものも含まれます。

なぜこういったことが起こるか? それは大脳新皮質に起因しています。

大脳皮質には、古くから発達した大脳辺縁系と、新しく発達した大脳新皮質があります。簡単に言うと「辺縁系=本能」、「新皮質=理性」です。

新皮質はいわゆる下等生物においては小さく、高等生物では大きくなる傾向にある。人間だから発達している部分です。

私たちは大脳新皮質の常識に支配されてしまい、「こうしなくちゃいけない」、「こうあるべき」といったものに縛られ過ぎているのです。

「1日3食、食べなくてはならない」という発想は、理性によるもの。一方で体は欲していない。物理的に必要がない状態なのだから、脳に支配される必要はないと気が付きました。


ヨ:物理的に空腹な状態はどうしたらわかるんですか?

ナ:ぐーっとお腹が鳴ったらですよ(笑) 「1日3食食べなくてもよい。体が欲している時に食べる」という生活に変えてからは、本当にドンドン痩せました。ただある一定のところに達するとそれ以上は痩せません。体が欲している範囲での食生活であれば不健康になることはないのです。

医者という立場から、体と心を分離して考え、1日3食という医療の在り方のおかしさに逆に気づくことができました。

ヨ:それから今に至るまで、1日1食を続けているのですか?

ナ:必ず1食というわけではありません。あくまで3食に縛られない。心がけているのは、体が欲するまでは脳に騙されない食生活です。

ただ人が用意してくれた時などに食べずにいるのは失礼ですので、1日3食のこともあります。先日の海外出張の際は3食用意して下さったので、その3食すべていただきました。

ヨ:人の恩義をとても大事にされる方なのですね。


ところで、先生は奥さまとは食事は別に済ますという記事を読みました。奥さまにも南雲式をオススメされないのですか?

ナ:横尾さんは世間知らずですねー。どんなに社会的地位がある人物でも

家族だけは言うことを聞かないものなんですよ。ご結婚されてないのであれば、これだけは覚えておいた方がよいですね(笑) 幻想を抱いていたら結局離婚することになりますから。

ヨ:勉強になりました(笑)


■普段持ち歩いているもの

ヨ:南雲先生が普段持ち歩いているものを見せてください。

ナ:化粧ポーチを持ちあるいています。乾燥するので化粧水とリップクリームは欠かせません。私はカバンの中に「折り畳み傘」を入れ、日差しの強い時は日傘として使っています。美肌をずっと保つためにも、日傘は大事なアイテムです。


ヨ:先ほど出張のお話がありましたが、先生の移動時間の過ごし方など空き時間の過ごし方を教えてください。

ナ:国内移動の際はパソコンを利用して患者さんからの質問メールにこたえたりしています。海外の場合は離着陸の際にパソコンを使えないので、手書きで原稿を書くことが多いです。

ヨ:先生は普段、どんな風に情報収集してるんですか? 情報の源はウェブサイト、書籍、雑誌などいろいろとあると思うのですが。

ナ:「なんでかな?」、「不思議だな?」と思うことありませんか? 強いて言えば、その発想を追及することが情報収集になっているのかもしれません。今はWikipediaなどを読めば、大体のことはわかるようになっています。逆に調べてわからないことであれば、自分で突き詰めて考える、既存の答えがあっても自分が納得できなければ考え続ける。そういうことを大事にしています。謎が解ける瞬間は何ものにも代えがたいです。

ですから、「なんでかな?」、「不思議だな?」という疑問を誰かが解いてくれている本やテレビに対しては興味がわきません。

ヨ:アイデアを思いついたときにはメモを取ったりするんですか?

ナ:メモを取ってもどこかになくしてしまうので、ブログ(なぐちゃん倶楽部)に書くようにしています。ブログに書くことで、アイデアが言語化され、具体性を帯びてきます。

またブログに書くことで、皆さんからの反応があるので、「これはさらに深く掘り下げて書籍化しよう」などと思うわけです。

私は人とのコミュニケーションが大好きで、様々な方に積極的に話しかけるようにしています。

話すことで、ブログ同様に思考が具体化されていくわけです。そういう意味では、しゃべり下手な方を見ていると「もったいないなあ」と思ってしまいます。


ヨ:先生は22時には就寝なさるとお聞きしましたが、代表的な1日のタイムテーブルを教えていただけますか?

ナ:22時に就寝、3時起床、3時~9時まで自宅で仕事をして、その後クリニック勤務。18時以降はフランス語のレッスンを受けたり、こうして取材を受けたりしています。

ヨ:すごく精力的ですね! 本当にすごい体力ですね。

ナ:以前、千代の富士が引退する時に「体力の限界! 気力も無くなり、引退することになりました」と言ったのを覚えていますか? 「こんなに筋肉あるのに!?」と皆さん思ったと思います。千代の富士があの時点で、体力も気力もまったくなかったかといえば、それはそうではなかったと思います。ただ体力、気力において、最高のコンディションの状態からは離れつつあったのだと思います。私もこの歳になってわかるようになってきました。私は常に気力・体力ともに最大値を維持したいと思っています。気力・体力を維持するために必要なのは、ベースとしての体が「健康であること」です。そのために食事について気を付けたり、睡眠時間に気を使ったりしているのです。

ヨ:先生をそこまで突き動かすものは何ですか?

ナ:夢と希望があるからでしょうか。

ヨ:夢や希望...、なかなか、どのように持ったらよいか...。「そもそも自分の夢って?」なんて人も多いと思うのですが、ぜひ先生からアドバイスをお願いします!

ナ:自分のことなので、誰かに教えてもらうのではなく、自分で考えて考えて考え抜くことが必要だと思います。

一方で皆さんへのヒントとしては、自己愛です。どんな時も自分を愛して欲しい。どんな敵が現れても、自分だけは自分の味方であってください。自分で自分を責めてしまい、悲しい結末を迎えてしまう方が近年は増えています。

大脳新皮質に支配されすぎず、自分を大事に夢をもって生きて欲しいと思います。


120515nagumo.jpg

ということで、南雲先生へのインタビューいかがでしたでしょうか? 「辺縁系=本能」、「新皮質=理性」なので、新皮質に支配されすぎないようにしよう、という考え方はお医者さんならではの発想ですね。

それにしても実際にお会いした南雲先生、本当にお若かったです。私も暴飲暴食を反省しつつ...、南雲先生のように本能の食事を心がけたいと思いました。

南雲先生、ためになるインタビューをありがとうございました。では、また次回! 誰かのライフハックを探りに行きます!

(横尾茜)