編集委員の横尾茜です。お久しぶりです!
自分にとっては習慣化してしまって意識していないことが、他人にとっては目からウロコのライフハックだった!? なんて激レアなライフハックを探るインタビュー『突撃!隣のライフハック』。今回は、精神科医の香山リカさんに突撃しました。
現役の精神科医であり、47万部突破のベストセラー『しがみつかない生き方』の著者でもある香山さんに、「SNSとの付き合い方」や「精神科医の選び方」などなどをお聞きしました。
インタビューは以下から!
ネット上だと全く会ったことのない人と、名前やその人のバックグラウンドなど、社会的な手がかりがないまま、話がいきなり本質的なところに及んだりしますよね。「実は今日、死にたくて...」みたいな話がいきなり出てきたり。
対面だったら顔色を見ながら段階的に進む話が、ネットを介してのコミュニケーションなので、いきなり本質的なところにいってしまう。異性間であれば、いきなり恋愛感情が出てきてしまったり。そのあたりのハンドリングは、ネットでのコミュニケーションの難しい所だと思っています。 ヨ:SNS利用の際に、気をつけた方がいいことがあれば教えてください。 カ:最近は、いい面に過剰な期待がかかりすぎている気がします。あまり楽観的にとらえすぎるのはどうかと。SNSはいわゆる「情報に強い人」だけでなく、本当にたくさんの人が利用するようになっています。コミュニケーションの対象が必ずしも「情報に強い人」とは限りません。今回の震災の時のように、みんながいつもと違う心理状態になった際には、不安の裏返しで攻撃の対象になったりすることもあると思います。それによって逆に傷ついたり。
色々あると思いますが、使っている人はみんな現実に存在する人なので、普段の人間関係同様に問題も起こるでしょうし、問題が起きることは不思議なことではないと思います。ただ問題なのは、形に残ること。そして、それによって深読みしすぎてしまうこと。
道を歩いてて通りすがりの誰かに舌打ちされたら、いやな思いはするけど、まあ「変な人だな」ぐらいの感じで、すぐ忘れてしまうと思うんですよ。でも、Twitterやmixiなどで言われたことは気になってしまう。「そんなことを言われる理由は自分にあるんじゃないか...?」と。舌打ちされたときは、そこまで思わないですよね。そんなときのためにも「やり過ごす」という能力を、今後は身につける必要があるのかもしれませんね。
ヨ:ご自身も批判されることもあるのでは? カ:私自身も自分の発言に対して、批判的なリプライをもらうことがあります。無視できなくて傷付いたり。貴重な意見もありますけど、非生産的でもありますよね。自分にとってあまりよくない状況になる場合は、「もうやめよう!」と思って物理的に遠ざかっています。手段としてそうしているというより、忘れたいので自然と。そうしてるうちに「のど元すぎればなんとやら」ですが、いつの間にか再開したりしてます(笑)。 ヨ:匿名だということもあると思いますが、強気な発言になってしまったりするのは何か理由があるのでしょうか? カ:直接的なコミュニケーションであれば、文字以外にも表情や声のトーンなど、他の要素があるから途中でコミュニケーションの仕方が変わりますよね。ネットは情報が文字だけだったり、直接的で感情がないコミュニケーションになりがちです。あとは、その人自身に今抑圧されているものがあるなど、相手側のコンディションもあると思います。直接関係ない他のことでムシャクシャしていたり、鬱積したものがあったりするのかもしれません。そこは文字からは計り知れないですよね。だから、あまり考えすぎずに「やり過ごす」ことが大事だと思います。あとは、その流れで逆に自分が必要以上に批判的な発言をしてしまったり、悪い流れにつながらないよう、人にされてイヤなことはしないように心掛けたいですね。
ヨ:「SNS疲れ」というのがあると思うのですが、ほどほどに保つコツはありますか? カ:人間の時間は限られているので、オンラインの時間はこれまでの生活時間にプラスしてできたわけじゃなくて、これまでの生活時間の一部をあてているわけです。新たに時間を作ることも大変でしょうし、それは疲れることもあると思います。ある意味当たり前です。もう少し「出入り自由」という意識をみんなが持てるといいのではと思います。「疲れた」とか「忙しい」とか「他にやりたいことがある」とか、多少わがままだけどこれまでの生活でもあった、当たり前の理由ですよね。当たり前の理由に対して考えすぎて、気を遣いすぎることはないんだと思えればいいんですけどね。気になるなら、「SNSを離れます!」と宣言しまうのも手です。心おきなく離れられる。
ヨ:ネガティブな意味でなく、ポジティブな意味でのSNS活用法は何かありますか? カ:コミュニケーションのハードルが低いですし、すぐ発信できたりと、メリットは際限なくあると思います。年齢、外見などもないバリアフリーな環境ではあると思うので、コミュニケーション下手と思っている方でも、気軽にチャレンジできる場ではあると思います。大学病院も街の病院も、設備の違いはあまりないです。大学病院の方が医者が多いので、診察時間が長いかもしれないけど、逆に医者の入れ替わりもあるので、そこは善し悪しです。あとは思春期などの専門性を打ち出している病院もあるので、そこがはっきりしているようであれば、そういったところに行くのもよいと思います。
私は日本の精神科医はムラがないと思っているので、自分が行きやすい場所でいいと思いますし、あとは行ってみて先生との相性などで選ぶのがいいと思いますよ。
昔はNECの『文豪ミニ』を使っていて、インターネットがなかったので、プリンターもセットで持ち歩いて、プリントアウトしたものをFAXしてましたよ。電源がなくていつも苦労してました。FAXも当時はコンビニとかになかったので、ホテルのFAXを借りたり...。その後は『シグマリオン』を使って、携帯つないで送ってましたが。
そんなこんなで、とにかく移動中に原稿を書くためだけに端末を使ってるので、基本的にはテキストエディタを使ってます。
ヨ:電車で原稿を書くってすごい集中力ですね! カ:集中力がすごいというより、持続力がないタイプなんです。今日一日あると思うと全然進まなくて。意外に腰を落ち着けて書くより、移動中の方が進む感じです。移動中に書いた原稿を後から読み直すと、同じ事を2回書いてたりしますけどね(笑)。 ヨ:私、ずっと気になってたんですが、普段精神科医の先生をされていて「香山リカ」ということはバレないですか? カ:インターネットなどで、すごーく私のことを調べていただいて、見つけて診察にくる方がたまにいらっしゃるんですが、そこはちょっと困っているところではあります。私、普通の精神科医で普通の診療をするのみなんですが、そういった方は「香山リカに診てもらえる」という期待値が高くて、なかなか期待にこたえられず...。2回目はいらっしゃらないこともありますし...。
電話などで事前に連絡があるときは、「ご近所のお医者さんがいいですよー」とおすすめしてます。でも、意外とわからないもので、気付かれることはあまりないです。付き合いが長くなって、「もしかして先生は...!?」なんてことは稀にありますが。
一方でこんなに精神科医として色々な本を書いていて、勤め先がナイショなのも変だな...と思いつつ。そこはずっと悩み続けてますが、きっと今後も悩み続けるんだろうなと思います(笑)。
ということで、香山さんへのインタビューいかがでしたでしょうか?
「やり過ごす」がキーワードとして何度も出てきました。一見「やり過ごす」ってなんだか良くないことのように感じますが、心にとっては大事なことなんですね。すぐに白黒つけたくなっちゃう今日この頃ですが、白黒つけられないもの、「時代が変わっても変わらないもの」があるというお話にはハッとさせられました。
香山さん自身も、批判的な発言に対して心を痛めていたり、お勤め先がナイショなことに悩んでいたり、なんだかとても親近感がわいたインタビューでした。
香山さん、ためになるインタビューをありがとうございました。では、また次回! 誰かのライフハックを探りに行きます!
(横尾茜)