編集委員の横尾茜です。

自分にとっては習慣化してしまって意識していないことが、他人にとっては目からウロコのライフハックだった!? なんて激レアなライフハックを探るインタビュー『突撃!隣のライフハック』。

第13回は、2010年の書籍売り上げナンバー1! 200万部越えの大ヒット『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の著者、岩崎夏海さんに突撃しました。

普段は、数多くのテレビ番組の制作に放送作家として携わる岩崎さんに、『もしドラ』を思いついたきっかけ、普段のアイディア発想術などをお聞きしました。

インタビューは以下から!

 

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ヨ:『もしドラ』、私も感動して泣きました! この本の企画を思いついたきっかけを教えてください。

イ:秋元康さんに師事していた時に、「17歳の女子高生」を主人公にした企画を考えるよう言われたんです。当時、ダヴィンチコードがヒットしていた頃で、これはウマい手法だと思いました。

ダヴィンチ×殺人事件

異色のものを組み合わせて、一つの作品にしています。

17歳の女子高生×何か異色のもの

...で何か考えられないかと思っていた時に、たまたまドラッカーの『マネジメント』を読んだのがきっかけです。ドラッカーの『マネジメント』のなかには、頻繁に「マネージャー」が出てくる。

あれ、これは高校野球の女子マネージャーが読んだら自分のことだと勘違いするのでは? おっちょこちょいな子だったら、マネジメントしだしてしまうのでは? というところから、

17歳の女子高生×ドラッカー

という組み合わせを思いついたんですね。でも実はこのアイディア、秋元さんに提出したんですが、ボツをくらったんです。ドラッカーなんてわかんないよと。

それから2年後ぐらいに、何気なくこのネタでブログを書いて、はてなブックマークの人気記事になり、そのエントリーを読んでいただいた方の中にダイヤモンド社の方がいらして、本にすることになりました。

ヨ:へ~。もともとは出版のための企画ではなかったんですね。200万部の大ヒットですが、この作品がヒットしてから生活に色々変化があったのでは?

イ:講演会が増えました。それまでは人前で話すことは、ほとんどない仕事だったので、最初は呼吸ができなくなるぐらい緊張しました(笑)。今も相変わらずドキドキしますが、新しいことへの挑戦になるので、自分の成長を促してくれるいい経験だと思ってます。

ヨ:私も人前で話すのは苦手なんですが、コツを教えてください。

イ:あまり話す内容を固め過ぎないようにしています。

最初の頃は、話すことを全部考えて講演に臨んでいたんですが、思い通りにいかないとドツボにはまるんです。ここで笑いがとれるはずなのに、クスリともされない!! とか(笑)。

なので、あまり考えすぎず、聞きに来た人と会話をするように話しています。もちろん、ノーアイディアでは話せないので、三題噺みたいな感じで、話のネタをいくつか用意しておく。それをその場で組み合わせて話すようにしています。

食材だけ用意しておいて、どんな料理にするかはその場で決めるようなイメージです。長い時には2時間ぐらいの講演をしますが、だいぶ慣れました。


ヨ:毎日ご多忙だと思いますが、よく見るサイトなどあれば教えてください。

イ:『もしドラ』の評判はよくチェックしています。

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Twitter、mixiの書評、amazonの書評などなど。『もしドラ』と「岩崎夏海」の悪口を見るのがクセになってます(笑)。悪評を見ると、「こんちくしょー! いつかぎゃふんと言わしてやるー!」と思うんです。次になにかするモチベーションになる

実は、僕は何かないと家でじーっとしてるタイプなんで、こういう過度な刺激でモチベーションをあげています。

ヨ:悪評って目をそむけたくなりそうですが...

イ:自分に自信を持っていれば、悪評もモチベーションにできますよ。ちなみに悪評は、モチベーションにするだけで参考にはしません。もっぱら褒めていただいた書評を参考にしています。

ぼくのことを悪くいう人は悪い人、良いという人は良い人。悪くいう人の話を聞きすぎてたら「キー!!!」となっちゃいますからね。みんなに受け入れてもらおうとは思ってないですし、完璧は求めていないので。

ヨ:他によく見るサイト、テレビや雑誌などもあれば教えてください。

イ:ニュー速VIPブログ」、「はてなブックマーク」のホットエントリーは見ます。あとは「Yahooニュース」ぐらいかな。テレビや雑誌はあまり見ないですね。

テレビは見ても「ワールドビジネスサテライト」か、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」ぐらい。雑誌も新聞も読まないです。本もあまり読まないんです。というか、買わないんです。

実は家の本棚を2つに限定していて、それ以上の本は買わないことにしています。むかしは壁一面本棚で、自分のコレクションを見て「素敵だ!」と思ってたんですが(笑)、どんどん本が増えていく。

読まない本も、そのまま放置されている状況が不自由な気がする。なんか貧乏くさい。引越しを機に、いるかいらないかわからないモノにこだわってるのはよくない! 整理しよう! と思って、本を本棚2つ分に厳選しました。

本棚を絞ってからは買う本も厳選するようになりましたし、読んでない本を積ん読することもなくなったので、気持ち的にスッキリした気がします。


ヨ:普段持ち歩いているものを見せてください!

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  • iPhone&ケータイ
    iPhoneは閲覧用です。電波があまりよくないので、連絡はドコモ携帯の方がメインですね。
  • ポケットに入るメモ帳&4色ボールペン
    思いついたらすぐ書けるよう、いつもポケットにメモ帳とボールペンを入れてます。Rollbahn(ロールバーン)のこのサイズのメモ帳はもう20冊目ぐらいです。4色ボールペンはアイディアを書きわけたりするときに便利です。
  • iPad
    最近は講演会などもあり、移動が多いので、iPadをノートパソコン代わりに持ち歩いています。
  • 万年筆
    今年発売になったモンブランのマーク・トウェインモデル。マーク・トウェインの大ファンなので、これは自分へのご褒美です(笑)。サインを求められた時などに使っています。
  • リップクリーム
    下唇が極端にあれるんで(笑)

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ヨ:次回作の予定はあるんですか??

イ:『もしドラ』がヒットして、みなさん次に何を期待してるかというと、「次回作がこけること」だと思うんです。「一発屋だったな」、「岩崎、おわったな」と言いたい。なので、失敗を期待している人の期待を裏切るような展開にしていこうと思っています。

ヨ:失敗を期待してる人の期待を裏切る! 複雑ですね(笑)。具体的にどんな本を出版予定なんですか?

イ:来年度に何冊か出版を予定していますが、6月に小説の読み方の本を出す予定です。

『もしドラ』の書評の中に、「『もしドラ』を読んでも『ドラッカーのマネジメント』はわからないかもしれないが、『ドラッカーのマネジメント』の読み方がわかる。ドラッカーの本を読んだことがない人は、この本を読むことからはじめるとよいのでは」というコメントがあった。

このコメントにヒントを得て、小説の読み方を書こうと思いました。「文章が下手だ」、「これは小説じゃない」という書評を書いてる人達に、ちゃんとした小説の読み方を教えてさしあげなくては! という気持ちもありますが(笑)。

ヨ:ちょっとだけその内容を教えてください。

イ:人は本を読むとき、登場人物やその背景に、自分や自分の身の回りをあてはめて読もうとする。そうやって、本を自分に引き寄せる読み方をしがちなんですが、それはよくない。

そうすることで、本の世界を狭めてしまっているんです。本の中に自分が入って、主人公と一緒に旅をするつもりで読む。自分が成長したいなら、自分が本に寄っていく読書をした方がよい

そんなことについて書く予定です。

ヨ:確かに!! 無意識に自分で読書の世界を狭めてるかもしれません。最後に岩崎さんの本棚から、おすすめの一冊を教えてください!

イ:岩波少年文庫版の『レ・ミゼラブル』巻ですね。これは普段、お笑い学校で講師をしている時にもすすめてます。小説、本というものの真髄がわかると思います。


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ということで、第12回のインタビューいかがでしたでしょうか?

ブログのエントリーがきっかけで書籍を出版。そして200万部の大ヒット! もちろん、岩崎さんの企画力あってのことだとは思いますが、チャンスはどこでうまれるかわかりませんね。

『もしドラ』は、iPhoneアプリ版も出ていますので、まだ読んでない方はぜひ! iPhoneアプリ版だけで10万部の大ヒット作です!

岩崎さん、ためになるインタビューをありがとうございました。では、また次回! 誰かのライフハックを探りに行きます!

(横尾茜)