編集委員の横尾茜です。
自分にとっては習慣化してしまって意識していないことが、他人にとっては目からウロコのライフハックだった!? なんて激レアなライフハックを探るインタビュー『突撃!隣のライフハック』。第7回は、公認会計士の山田真哉さんに突撃しました。
山田さんは、あの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(160万部突破)の著者。この1月にも新刊『目のつけどころ』をリリースされました。
本の執筆の他、雑誌の連載やテレビ番組のコメンテーター、テレビドラマの監修など、マルチにこなす山田さんに、お仕事ハックをはじめとしたライフハックをうかがってきました。
1年間の猛勉強で公認会計士に合格した秘訣も!?インタビューは以下から!
よこお:現在は執筆活動をメインにされてるんですか? やまだ:公認会計士が本業ですよ。僕は、『山田三分の計』と呼んでるんですが、
- 公認会計士の本業
- 執筆活動
- メディア活動(コメンテーターや監修など)
の3つの活動を行ってます。元ネタは、三国志のなかで諸葛孔明が劉玄徳に授けた「天下三分の計」。3つだと全て立つんです。2つだとどちらかが滅びる。3つだとお互い牽制しあって、一番バランスが取れるんです。
- 会計士業=お客さんの話を聞くことが多いので=受信(インプット)
- メディア活動=コメントをしたり、監修をしたり自分の知識を活用することが多いので=発信(アウトプット)
- 執筆活動=書いたり、書くために調べたり=受信&発信
という形で、相互にうまく作用するようにしてます。
よこお:発信のためのネタ集め、工夫されていることはありますか? やまだ:あらゆる物事をインプットに活用しています。テレビの仕事も一見アウトプットですが、自分の映り方、現場で知る番組構成などその気になればインプットはたくさんあります。あとは、テレビはよく見ます。テレビには優秀なクリエイターが集まってる。特にCM。新しいCMはいつもチェックしてます。家でごろ寝しながらタダでクリエイターの作品が見られるわけですから、見ない手はないですよね。
よこお:たくさんの執筆依頼が来ると思うんですが、どうやって仕事を選んでるんですか? やまだ:選ぶほどオファーは来ないですよ(笑)でも、強いて言えば、 一行で説明できて理解できる仕事は受けるようにしています。今回の本も「山田真哉の目のつけどころの本」。シンプルでわかりやすい。パッと聞いてよくわからないものは、具体的に聞いても焦点がぶれて、より一層なんだかわからない。キャッチコピー的にスッと入ってくるものを選んでます。
よこお:執筆活動をされたり、キャッチコピー的に物事を捉えたり、とても言葉にこだわりがあるように感じるのですが? やまだ:言葉や文章にはこだわってます。他の会計士の人があんまりこだわってないポイントなんですよねー。だから、あえてこだわりたいというのもある。公認会計士になる前に、現代文の講師をしていた影響もあると思います。結構文章には厳しいですね(笑)。 よこお:現代文の先生の経験から、文章を書くときのアドバイスをお願いします! やまだ:とにかく一文を短くすること。「主語+述語」の構造をしっかりとさせて、そこに修飾語が入る。接続詞でそれをつなぐ。シンプルなことなのに、意外とできてない人が多いんです。長く書いてしまった場合も、短く割っていきます。メールでもなんでも、仕事ができる人は文章が短い傾向があるし、短くてもちゃんと伝わるんですよね。
よこお:日々お忙しいと思いますが、そんな中、スケジュール管理や原稿執筆などで活用しているアイテムはありますか? やまだ:うーん、持ち歩いているのは、B5サイズのeeepcのみで、あまり道具にはこだわらないんです。スケジュールの管理はYahoo!カレンダーを使ってます。公認会計士の場合、上下関係ではなくチームでの仕事になります。チームでの仕事の場合、みんなが新し物好きならいいけど、新しいツールの導入はハードルが高い。便利にするためにツールを導入するのに、導入のためにみんなの手を煩わせていては、本末転倒ですよね。目先の進歩を追わずに、本質の進歩を見極める必要があると思ってます。
よこお:どうやって見極めてるんですか? やまだ:実際に自分で使ってみることで判断しています。あと、いいツールには万人が共感する驚きがありますよね。 よこお:山田さんは1年間の猛勉強で公認会計士2次試験に合格したそうですが、必勝勉強法を教えてください! やまだ:とにかくめちゃくちゃ勉強しましたね。ポイントはズバリ! 友達や恋人をつくらない! 友達や恋人がいると、自分のペースを乱されてしまいますよね。あとは、休息は自分のペースでとる。本気になったらそのぐらいやらないと。今までの友人には「試験勉強のため、1年間連絡とれないから」と連絡しておきました。
よこお:おおおお、なかなかそれができないんですよね...。そこまで厳しいと、他人にも厳しくなっちゃわないですか? やまだ:まあたまに...(笑)。でもみんなが僕ではないので、そこはわきまえてますよ。実は、この4月から1年間、育児休暇をとる予定なんですが、そういうことを他人に強要しようとは思わないですし(笑)。 よこお:育児休暇ですか!? それは珍しいですね。 やまだ:実は10年前から、結婚もしてないのに育児休暇をとる予定を立てて、それに向かって準備してきたんです(笑)。育児がやりたい! じゃあ、サラリーマンでは難しいかな...。
↓
ある程度自由がきく職業、自営業がいいな
↓
自営業って何がいいかな
↓
資格を取ろう! じゃあ、公認会計士!
みたいな流れで。そのなかで、育児休暇を取るためのカードを集めてきた感じです。資格の他にも、印税や株式投資などなど、育児休暇のためのカードを集めてきました。
よこお:目標に向かってのアクションを、そこまで分割して考えられるのってすごいですね。 やまだ:割り算っていくらでもできるんですよ。僕は、ゴールが明確なものには、かならずそこに到達するための計算式があると思ってます。計算式が間違ってたら、途中で書き換えればいいし、数式を加えてもいい。もちろん、ゴールが見ないものもありますけどね。 よこお:文章の書き方もそうでしたが、『割る』がキーワードになってますね。最後に山田さんが日常的に意識していることや、意識的にしていることがあれば教えてください。
やまだ:「足るを知る」ですね。老子の教えなんですが、簡単に言うと「今を満足する」ということ。 満足しないということは、欲が増えるということ。欲が増えるから不満が起こるんです。僕は高校生のときにこの『足るを知る』を意識するようになってからは、日々幸せですよ。精神的に強い方ではないですが、この教えに助けられている気がします。もちろん向上心は大事だと思いますが、向上心は心理的ストレスにもなるので、月に2、3日でいいんじゃないですかね。
ということで、第7回のインタビューいかがでしたでしょうか? 『割る』というキーワードがとても印象に残ったインタビューでした。
おもしろいと思ったらその中身を割ってみる。
ゴールに到達するために、ゴールをアクションに分割してみる。
何気ない日常も『割る』という観点で眺めてみると、違った側面が見えてきます。山田さんの発想術は、新刊『目のつけどころ』にもギュギュっと詰まってますよ。
山田さん、ためになるインタビューをありがとうございました。では、また次回! 誰かのライフハックを探りに行きます!
(ライフハッカー[日本版]編集委員・横尾茜)