広がる「即時お届け」 スマホで誰でも買い物代行
(三浦茜)
米サンフランシスコ発のファッションブランド、エバーレーンのサイトでは商品の発送方法を3つから選べる。4~8日かかるスタンダード、2日のエクスプレス、そして1時間お届けだ。
筆者も試したところ、注文後30分ほどで手元に届いた。急にギフトを用意することになったり、お呼ばれしてシャツが必要になったり。ファッションのジャンルでの1時間お届けのニーズは高くないかもしれないが、斬新な取り組みである。
このお届け部分を担うのは、同じくサンフランシスコ発のスタートアップ、ポストメイツだ。スマートフォン(スマホ)と全地球測位システム(GPS)を活用して、どんなものでも1時間で届けられる配送網を整備している。
2011年創業のポストメイツは表向きは食事の宅配サービス。ポストメイツのサイトまたはアプリから、自分が食べたいレストランとメニューを選んで注文。すると、レストランの近くにいる同社の配達員がお店に行って受け取り、自分のもとに届けてくれる。
配送料は3.99ドルから。現在200を超える都市でサービスを展開中で、月間配達数は100万件を超えるという。
著者もよくランチタイムに活用している。自分でランチを買いにいく時間がない時はもちろんのこと、少し離れたレストランのメニューを試すことができ、ランチのバリエーションが広がる。
配達の様子はウェブやアプリで確認できる。配達員の顔写真と名前、また配達員がいまどこにいるのかが地図上にリアルタイムで表示される。あと何分で届くか配送予測時間も確認できるので、気をもむこともない。
ポストメイツは2万5000人の配達員と契約している。スマホを持っていて、一定の選考プロセスを経て問題ないと判断されれば誰でも配達員になれる。
顧客からの注文が入ったら、ポストメイツがGPSを使って近くにいる配達員のスマホに通知を送る。配達員はアプリの指示に従って買い物し、それを注文者の元へ届ける。宅配業者ではなく近くにいる誰かが買ってきてくれるのだ。
誰か近くにいる人が買ってきてくれないかなーというような、誰しもが考えたことがあるであろう妄想がスマホによって可能になった。
ポストメイツはこの配達員のネットワークの仕様を公開し、外部に提供している。冒頭のエバーレーンも配送を担っているのはポストメイツだ。
シアトルではスターバックスと提携してコーヒーのお届けを担い、アップルストアが提供する当日お届けも請け負う。先日は、ネット通販サイトを簡単に作れるサービス、ショッピファイとの提携を発表した。エリアの問題などはあるが、ショッピファイを利用する2万1000店舗に即時お届けの可能性が広がった。ポストメイツは今年2億2500万ドルの売り上げを見込んでいる。
アマゾン・ドット・コムも一般人が配達人となるサービスを始め、近所のスーパーで代わりに買い物してくれるインスタカートも注目されている。配車アプリのウーバーは運転手による食事宅配サービスを始めた。
即時お届けの分野は、今後競争が激化しそうだが、利用者としてはより便利になってうれしい限りである。
(スクラムベンチャーズ マーケティングVP)
〔日経MJ2016年6月3日付〕