米スタバ注文アプリの完成度 全米で月500万件注文
(三浦茜)
朝、家を出る際にアプリでコーヒーをオーダーし、5分後、駅前のスターバックスでピックアップする。今年9月からスターバックスが米国で始めた事前オーダーアプリにより、そんなことが可能になった。しばらくスタバから遠ざかっていた筆者も、このアプリをきっかけにスタバの利用頻度があがった。アプリの使い勝手や店舗側のオペレーションをリポートしたい。
まずは使い勝手が非常にシンプルである。アプリを起動すると最も近い店を指定してくれる。ルート付きの地図とともに自分がいる場所から徒歩で何分、車なら何分かが表示される。ほかの店舗を選ぶことも可能だ。深夜に起動したら、開店中の店で、最も近いスタバが表示された。
店舗が決まったらメニューからオーダーを決める。ラテのカスタムなど複雑な注文も可能だ。スタバ専用のカードかクレジットカードで支払いし、店に向かう。
既に注文したラテが出来上がっていた。お昼時ということもあり、レジ前には行列。これまでならば10分は待たなければならなかっただろうが、1分にも満たなかった。
通常だと店員がカップに注文内容を書き込み、バリスタに渡す流れだが、アプリ経由の注文は、レジ横の機械から注文内容がかかれたシールが出てくる。それをレジスタッフがカップに貼りつけ、バリスタに渡す。通常のオペレーションに組み込むことで、全米7400店舗で始めることができたのだろう。
課題は予約注文ができない点だ。通常のフローに組み込むためだと思われるが、「1時間後に注文する」といったことができない。熱々のコーヒーを飲むためにも、今後期待したい機能だ。
店舗で注文するのとアプリで注文するのとでは、待ち時間が数分の差しかないと思う人もいるかもしれない。だが、忙しい人にとって、その数分の差が価値がある。筆者の周りでも1度利用した人は2度、3度とリピーターになっている。
このアプリは現在1600万人のアクティブユーザー(一定期間内に1回以上利用する人)がおり、月500万件の注文が入る。またスターバックスは宅配サービスのポストメイツと提携したことで、アプリで注文後に店に取りに行くほか、デリバリーを選べるようになる。まずはシアトル地域から始めるようだが、サンフランシスコでも利用できるようになったら利用してみたい。
米国ではスタバのように財布を出さない事前オーダーアプリが増えている。日本にも上陸したウーバーもアプリ内決済だし、レストラン予約サービスのオープンテーブルも自分がレストランを出たいタイミングでアプリを使って支払いを済ませることができる。
米国は至る所でデビット・クレジットカード払いが可能なため、もともと現金を持ち歩くことがないが、アプリの普及によってカードすら持たない生活になりつつある。日本はスイカなどの電子マネーが普及しているが、米国はアプリ内決済という日本とは異なる形で決済方法が進化している。
アプリ内決済にはクレジットカードの事前登録が必要なため、現金主義が根強い日本ではためらう人も多いだろう。だが、一度使えば非常に心地よいサービスであることが実感できる。携帯電話の支払いとまとめて課金されるキャリア決済など、独自の形で近い将来日本でも導入が進むだろう。
(スクラムベンチャーズ・マーケティングVP)
〔日経MJ2015年12月18日付〕